
マネーフォワードは、2022年5月に10周年を迎えました。
そんなマネーフォワードを語る上で切り離せないのが「Mission、Vision、Value、Culture」通称MVVCです。
実際、マネーフォワードにジョインしたメンバーの誰もが、入社してすぐに、MVVCが共通言語となって組織を形作っていることを目の当たりにし「マネーフォワードがカルチャーを大事にしているっていうのはこういうことだったのか!」と驚きます。
それくらいに、マネーフォワードのメンバーにとって、MVVCは大切なもの。
そんなマネーフォワードのカルチャーが今のMVVCの形になってから、今年で6年。
カルチャーを言語化し、現在はVPoC(Vice President of Culture)としてマネーフォワードにおけるカルチャーを牽引する金井さんに、次の10年に向けたカルチャーについて、ディープなお話しを聞かせていただきました。
金井恵子/Keiko Kanai
株式会社マネーフォワード VPoC
2014年1月にマネーフォワードに入社し、プロダクトのUI設計・デザインを担当後、デザイン戦略室を立ち上げる。
その後、マネーフォワードのミッション・ビジョン策定や事業コンセプトの可視化を行い、現在はVPoCとしてカルチャー部をリードしつつ、コーポレートブランディングと、さまざまな発信を行なっている。
ー さっそくですが、MVVCを策定して今年で6年目、会社のメンバーの数も100人ほどだったところから、1,000人を超えるフェーズになったわけですが、改めて、これまでを振り返ってみて、マネーフォワードにおけるカルチャーってどういうものだと思いますか?
金井:普段、私たちは企業文化のことを「カルチャー」と呼んでいます。それとは別に、マネーフォワードのMVVCのCである「Culture」は、もう少し限定的な意味で「どんな人と働きたいか」を『Speed』『Pride』『Teamwork』『Respect』『Fun』という要素で、表したものになるんです。
経営陣と一緒にこれを定めた当時、人として大事にしたいこと、つまり、仕事への向き合い方や、人生への向き合い方について、それぞれが思うことを言語化していったイメージです。
だから、MVVCが組織に浸透していった先に、メンバー全員のアクションの中枢になりうる企業文化というものが染み出してくると考えています。
その意味で、マネーフォワードにおけるカルチャーは、空気のようなもので、普段みんながカルチャーをものすごく意識しながら働いているわけではないけれど、みんなの考えや行動のなかに自然とカルチャーが存在しているんです。自然にそこにあるからこそ、自分たちらしさや、誇れるアイデンティティになっているんだろうな、という気がしています。
よく、企業の文化担当の方だったり、これから企業文化を言語化しようと考えている経営者の方だったりに相談いただくことがあるんです。特に新しい会社だと「企業文化なんてさておき、まずは早く成果を出すべきじゃないか」という声が上がることも多いんですが、企業文化やカルチャーをおざなりにせず真ん中に据えて進んできたことが、マネーフォワードの他社との差別化ポイントだと思っています。
ー なるほど。マネーフォワードでは、そういった声は上がらなかったんですか?
金井:もちろん最初から全員のコンセンサスが取れていたわけではないし、経営陣も最初からみんなが腹落ちしていたわけではないと思います。会社における戦略のようなものと同等かそれ以上に、文化っていうものが大事だと思ったのは、もっと後の話ですね。

でも初期の頃のそういった感覚は、私もよくわかっていて、当時はまだ会社も余裕がない状態なので、カルチャーの言語化なんていうと、すごく悠長な感じがしてしまうと思うんです。
私自身、デザイナーとして目の前のプロダクトを早く作らないといけないのに、カルチャーを形にすることに自分の時間の半分くらいを取られていたので、短期的な目線で見ると「早くプロダクトを作ってくれよ」って思う人がいても仕方がないとわかっていました。
でも、カルチャーを言語化して、形にできない想いや価値観を共有することは、長期的な視点で考えたときに、意味のあるものだと感じていたのでこれはちゃんとやろう、と思って進めていましたね。
ー 先日辻さんがPodcastで「他の誰でもなく、マネーフォワードらしくあればいいんだ」「各社がこうしてるからこうしなきゃいけないじゃなくて、僕たちだったらどうアップデートできるんだっけって考えるようになってきている」ということを話しておられて、金井さんもそれに共感したそうですね。
金井:以前は、他の企業さんが、さまざまな取り組みをどんどん進めて、それをうまく世の中の動きに絡めて発信する動きを見て、すごく焦りがあったんです。「マネーフォワードは全然できていないじゃないか」って。
だけど、そういう他社でうまくいっていることを、そのまま真似してやってみてもうまくいかないんですよね。
自分たちは今どんなフェーズにいて、今組織は何がうまくいっていないのか、っていう課題に向き合って、じゃあどうしていこうか、っていうことを考えたうえで、自分たちらしい施策をやらないといけない。
最近やっと、その想いと組織のありようが噛み合いはじめてきた感覚があって、教科書や先人企業に則ったことをやらなくても、私たちらしいやり方でやっていいんだなと思えるようになったというか。
だから、辻さんのお話しを聞いて、あ、すごいシンクロしているな、っておこがましくも思いました(笑)
企業文化っていうのは、マネーフォワードらしさとか、自分たちのアイデンティティだということに、やっと自信が持てたんです。
自分たちらしくやり続けることが、企業文化の浸透に繋がっていくんだろうなと、6年経ってようやく感じられるようになってきました。
ー そんなカルチャーに関する思い出深いエピソードが、2年前の「横浜F・マリノス」とのトップパートナー契約のことだとか。
金井:そうなんです。実は、社内のカルチャーを感じるエピソードって、もちろんいっぱいあるんですけど、マリノスのことは、カルチャーを会社の外から評価してもらえた出来事だったので、ちょっと特別な想いがあります。
当時、パートナー締結が決まったとき、私をふくめたくさんのメンバーが、特になんの忖度もなしに、自分のTwitterアカウントで喜びの声を発信したんです。
私たちにとってはそれって特別なことではなくて、自然にやっていたことだったんですが、スポーツ業界の人たちからすると、信じられないことだったみたいで「マネフォってすげぇ」と話題になったみたいで。
そもそも、自分の会社が好きじゃないと、わざわざ社名を名乗って実名でツイートしないですよね。さらに、頼まれてもいないのに、ポジティブなことをツイートしているので、この会社の人たちってなんなんだ! と、驚かれました(笑)

同じように、マリノスとのパートナーシップのなかで、私たちにとっては当たり前になっている「マネーフォワードらしさ」を現した取り組みを企画すると、社外のマリノスサポーターのみなさんや関係する方々がすごく喜んでくれて、それを通じてマネーフォワードのカルチャーが勝手に広まっていくんです。
実際にそのパートナーシップのムーブメントを知ったことをきっかけに、マネーフォワードに入社してくれたメンバーも5、6人いるんですよ。
メンバーがカルチャーを体現したことが、会社の外にも伝わって、外の方々からの視点で、改めて自分たちの良さを知ることができました。私たちの文化は、外に対しても影響を感じてもらえるものなんだって実感できたんです。
それがすごく自信にもなったし、改めてマネーフォワードって素敵な会社だなぁ、と思って。だから、私のなかで、マリノス関連のことはすごく印象的な出来事でした。
ー 以前「カルチャーの浸透がうまくいっているのかどうか分からなくて不安だった」とおっしゃられていましたが、これは浸透してきているな、と手応えを感じられたエピソードを教えてください。
金井:2020年の初頭にコロナウイルスの感染が拡大して、世間が混乱しだした時に、マネーフォワードの有志メンバーたちがいち早く「新型コロナウイルス 支援情報まとめ」というサイトを立ち上げて、政府や民間が実施している補助金や助成金等の情報をわかりやすく発信したんです(※「新型コロナウイルス 支援情報まとめ」は2022年2月28日を持ってサービス終了しています)。
実はあのプロジェクト、とあるメンバーからの一言がきっかけだったんです。
そのメンバーは「カルチャーって、みんなをひとつにするための会社のツールだよね」という、ちょっとシニカルな見解を持っている人物で、それは全然悪いことではないんですけど、コロナウイルスが広まりだしたときに、彼が「マネーフォワードも、こういう時こそ、ミッションにならった動きが行われて初めて、MVVCが浸透したって言えるんじゃないの?」と私に言いました。

よしだったらやってやろう! と私も鼓舞されて、Slackで全社に提案してみたら、思った以上にみんながミッションを背景に「何か自分にできることをやりたい」と考えていて、それぞれに自分の仕事があるなかで、部署や職種の垣根を越えてすごいスピードであのサイトを作りあげました。
もうそれにすごく感動して。
やっぱり私たちは、ミッションに向かって頑張っている会社だし、みんなそのことに誇りを持っている。そして、なにより、みんなが「Respect」とか「Teamwork」を体現するように、目を輝かせながら、ひとつのものを生み出す姿を見て、ああ、カルチャーを進めてきてよかったな、と胸が熱くなりました。
それまで、MVVCを作ったものの、その価値に対して半信半疑だったところもあるんです。それを作ることで、会社ってどうよくなっていくのか分からなくて。
でも「新型コロナウイルス 支援情報まとめ」サイトの制作を通じて、間違ってなかったんだなって確信が持てました。
この件をきっかけに、私はマネーフォワードのカルチャーに対して、しっかり責任を持ちたい、と思ったし、今、デザイン組織のトップを務める執行役員 CDOのセルジオさんが、それまでずっと断っていたマネーフォワードのCDOのポジション就任を決断してくれたんです。「マネーフォワードみたいな会社にコミットしたい」と。
メンバーが「世の中のためになることをしたい」「社会貢献がしたい」という想いを体現することが、そういう誰かの大きな決断のきっかけになるって素敵なことだな、と思います。
ー さて、ここまで結構たくさんこれまでのお話しを聞かせていただいたんですが、次の10年でマネーフォワードのカルチャーってどうなっていくと思いますか? 金井さんの想いが聞きたいです。
金井:そうですね、一言でいうと、アップデートされていくことが必要だなと思っているんです。マネーフォワードのカルチャーって、もちろん守りたいものでもあるけれど、会社も世の中もどんどん変化していくから、そこに合わせて変化し続けていくのが大事ですよね。
その変わってゆくという前提の中で「大事にし続けていきたい、不変的な自分たちらしさ」と「新しい自分たちらしさ」をちゃんと認識し続けるというか、混ぜ合わせていけるといいのかな、と。
凝り固まったり、「これは文化に反するから」と切り捨てるのではなくて、いいものをどんどん取り入れて柔軟に変化してく。これってこの6年間もそうだったんです。
MVVC自体は変わっていないけれど、解釈はアップデートされ続けています。
「私たちにとっての『Speed』って昔はこうだったけど、今はこうだよね」といった話が、常に生まれる組織でありたいと思います。
ー なるほど。その意味で、カルチャーをアップデートしていく、アップデートし続けるためには、みんながどんな気持ちで組織を作っていくことが必要でしょうか。
金井:そのためには、今みんながどうカルチャーを解釈しているのかを知ることが大切なんです。そして、その解釈のすり合わせがきちんとできる状態を作っていくのが大事なんだと思います。
例えば、私がいるカルチャー部の入っているPeople Forward本部みたいな部署だと、「Respect」ってどういうことだろう、みたいな議論をすることって、結構多いと思うんです。そういう状態をもっと全体に広げていきたいですね。
最近「Value / Culture ワーク」という、スモールチームに分かれて、各々が自分の考えるカルチャーの意味を言語化して共有するっていうワークショップを実験的にやってみているんだけど、これはまさに、みんなが自分の言葉で会社の文化を語れるようになって欲しいという思いでやり始めたものなんです。

ー 先日「Value / Culture ワーク」に参加させていただきましたが、あれ、とてもよかったです! 自分の言葉にしてみると、カルチャーがより自分ごと化された気がしたし、他のメンバーの解釈や言葉を聞いて、なるほど、と思うこともすごくたくさんあって。
金井:それは嬉しいです! あのワークショップは近々、全社に展開できたらいいな、と思っています。
ー そういった、カルチャーの火付け役として、さまざまな施策を生み出していくために、マネーフォワードのカルチャー部が存在している、という感じですか?
金井:私のVPoCとしての役割と重なる部分があるんですが、カルチャー部に二つの役割があるんです。
ひとつは、今のマネーフォワードらしさってこういうことだよね、ということを抽出する役割ですね。守っていきたいマネーフォワードらしさがMVVCに書かれているとしたら、じゃあ今はこういう情勢だから「Speed」感と「Teamwork」感をもっと強めていった方がいいんだろうか、といったことをキャッチしてチューニングしたりアップデートするんです。
そしてもうひとつの役割は、そのキャッチした今のマネーフォワードらしさ、みたいなものを、どうやったらみんなの心に着火できるのか、という最初の1本のマッチを擦るようなことですね。
大事なのは、カルチャー部はみんなの上に立っている訳じゃないよ、ということなんです。「カルチャーのリーダーである」とか「カルチャーの旗振り役である」っていうのは違うんですよね。カルチャー部のメンバーは、みんなの中にいて、みんなを熱くさせるためのエンジンのような存在であるのが理想なんです。
ー マネーフォワードで働くうえで、MVVCは切り離せないものかと思います。冒頭で、5つの「Culture」には「どんな人と働きたいか」ということが書かれている、というお話しもありましたが、これからマネーフォワードにジョインしたいと考えている人たちに、マネーフォワードのカルチャーをどんなふうに捉えて欲しい、と思いますか?
金井:私、毎月定例で表彰されるカルチャーヒーローの発表がすごく好きなんですよね。カルチャーヒーローに選ばれた人のナレッジ共有を聞いていると「みんな素敵なこと言うなぁ、さすがだなぁ」と思うんです。
あの発表はとても意義があるもので、カルチャーをみんながどう解釈して体現しているのか、っていうのを、いろんな人の言葉で聞けるんですよね。
だから、これからマネーフォワードにジョインする人にはぜひ、自分もカルチャーの担い手の一人なんだ、と感じて欲しいし、MVVCは会社の価値観を言語化したものではあるけれど、マネーフォワードにおけるMVVCの存在は、会社からの一方的なものではなくて、この会社で働くみんなの一つひとつの価値観の集合体なんだと知って欲しい。
会社としてこうありたい、という想いの軸に、ちゃんとみんなの想いが乗っているものだからです。
だから、自分もマネーフォワードらしさを作る一人なんだ、と共感してもらえるとすごく嬉しいですね。

ー そうか、そこがさっき話にでたように、自分の言葉とかストーリーで会社のMVVCを語る、ということと、カルチャーの捉え方をアップデートしていく、というところに繋がるわけですね。
金井:はい。なんか、少なくともマネーフォワードのカルチャーは、みんなで大声で毎日唱和する、とか、洗脳的に強制するようなものでは、全くないんだってことなんです。
カルチャーをアップデートする、といったことって、入ってみないと感覚が分からない部分かなとは思うんです。でも「カルチャーをみんなが大切にしていて、共感しているんです」っていうことだけではなく、みんながカルチャーに対してちゃんとアクションしているからこそ、共通言語になっているし、マネーフォワードらしさが徐々に強くなってきているので、マネーフォワードにジョインすると、自分もそういうアクションができるんだな、ということにワクワクして欲しいと思っています。
ー 最後に、金井さんご自身のVPoCとしてこうありたい、という目標や想いを聞かせていただけますか?
金井:先ほどのカルチャー部の話のところと重なるんですが、私はカルチャーの教祖様ではないんです(笑)
そもそも、カルチャーを作っているのは決して私ではないんですよね。マネーフォワードという会社が生まれて、成長する中でなんとなく見えてきたものを、私がMVVCという形でまとめて言語化しただけなので。
カルチャーを作ったのも、浸透させているのも、マネーフォワードのみんななんです。
私は、MVVCの策定に関わったり、会社の創業期からいていろんな経緯を知っていたり、もともとコーポレートデザインをしていたっていうバックグラウンドもあったりで、マネーフォワードらしさの理解度が高いから、これはマネーフォワードらしいね、らしくないねっていうことの可視化ができるだろう、っていうみんなの期待値があると思っていて。
だから、このVPoCっていう役割をやらせてもらえているんだと思っています。
なので、みんなが「マネーフォワードらしいってどういうことなんだろう」「カルチャーってなんなんだろう」って疑問に思ったときに、その理解度をあげる手助けができたらいいなって思っています。

ー 最近でこそ、コミュニケーションデザイナーのような、目に見えないものをデザインする、っていう仕事の概念が出てきていますが、みんなのマネーフォワードらしさの解像度をさまざまなやり方で整理してデザインする金井さんの存在は、時代を先駆けていたんだな、とすごく思います。
金井:まあ、いまだに「何を言ってるか分からない」って言われたりするんですけど(笑)
MVVCが浸透したから、その策定に関わってきたことを実績として見てもらえるようになったんですよね。だから「それってマネーフォワードらしいんでしょうか」っていう私の問いかけも聞いてもらえるようになってきたというか、やっぱりそこまでくるには時間がかかっているんです。
よくわかんないMVVCやってる人って思われていただろうと思います。
今でこそ「デザイナーとして概念を目に見えるようにしてくれる人」っていう認知をしてくれているけれど、その頃はまだ途中だったから、可視化したら何が起こるのかっていうことも、誰にもわからない状態だったので。
そんなふうに信頼がなかったから、なんとかみんなを巻き込んでいくために奮闘し続けていました。
だからこれからも、ミッションから全ての物事が繋がっている状態を作ることが大事だという思いをぶらさずに、続けていきたいと思います。
ー 企業のカルチャーと聞くと、やや形骸化したスローガンのようなものをイメージする人が多いのではないか、と思うんです。私も入社前は「カルチャーが浸透している」とは聞いたものの、実際にどういう状態なのかは想像しにくいものがありました。
でも、実際に入社してみて、マネーフォワードにおけるカルチャーを、メンバーひとり一人が自分の言葉で語れるのを目の当たりにし、なるほどそういうことなのか、と感動したことを覚えています。
そんなマネーフォワードの企業文化を作ってきた金井さんの想いやビジョンを、たくさん聞かせていただき、改めてカルチャーについて理解が深まりました。
本日は、どうもありがとうございました!

取材・文/新田大航(マネーフォワード採用広報)
写真/苞山美香(マネーフォワード採用広報)