
マネーフォワード初の100%子会社 マネーフォワードケッサイ株式会社は、創業7年目に入りました。代表取締役を務めるのは、設立当時30歳で同社を立ち上げた冨山さん。
監査法人、コンサルを経て、マネーフォワード入社後は『マネーフォワード クラウド』の普及と事業開発を経験後、経営者として奮闘する冨山さんに、自身のキャリアのこれまでと、これからについて語っていただきました。
冨山 直道|とみやま なおみち
2010年に慶應義塾大学経済学部卒業後、有限責任あずさ監査法人に入社。大手エンターテインメント会社、リゾート運営会社を中心に会計監査業務及び内部統制監査業務に従事。コンサルティング企業にて、大手製造会社等の私的整理や法的整理の案件に多数関与。2014年にマネーフォワード入社。『マネーフォワード クラウド』の事業戦略立案や新規事業展開に従事。2017年、MF KESSAI株式会社(現マネーフォワードケッサイ株式会社)代表取締役就任。2021年、株式会社Biz Forward代表取締役就任。
ー まずは、マネーフォワードに入社する前のキャリアについてお話を聞かせてください。新卒で監査法人、次に事業再生コンサルを経験されているんですね。
実は、新卒で監査法人に入るというのは、予想外なことでした。
大学でアメリカに交換留学していた時に、ボストンキャリアフォーラム※で外資系投資銀行の内々定をもらい、卒業後はそこに入社するつもりでした。しかし、内定者インターンをしていたタイミングでリーマンショックが起きて、金融業界の景気が悪くなってしまい、予定していた採用枠がなくなり、急遽、就職活動をやり直すことになったんです。インターン中にもう少し経営や会計知識を身につけたいと思ったこともあり、公認会計士の道を選びました。経済学部だったので、周りにも公認会計士を目指している人が多かったですし、これを良い機会と捉えて、興味のあった財務会計について経験を積もうと思い、公認会計士試験を経て監査法人に入社しました。
※アメリカのボストンで開催される世界最大級の日英バイリンガルのための就職イベント
監査法人で1年半ほど勤務したあとは、事業再生がメインのコンサル企業に転職しました。事業再生コンサルは企業が一番困っているフェーズを一緒に解決する、企業のドクターのような役割なので、社会への貢献も大きいと考えたんです。
入社後は、周りの人たちがみんな頭が良くて刺激を受けましたし、事業再生をゼロから全部経験させてもらうこともできました。担当していたのは日本のナショナルクライアントが多く、業界も様々だったので、解決策の提案を通じて、財務だけではなく事業についても幅広く学ぶことができました。正直、当時の記憶が無いくらい、仕事はきつかったです。毎日、深夜に日付が変わってからタクシーで帰宅して、翌日も早朝から出社するような生活です。そんな感じで必死にくらいつき、1年経ってやっとひとりのコンサルタントとして価値が出せるようになりました。
コンサルタントの仕事自体はやりがいがあって、自分にも合っていたと思います。ただ、2年半ほど働いて、改めて自分の立ち位置や今後のキャリアを考えた時に、この場所で次のステップを目指すには、自分はまだ若すぎると思ったんです。当時の僕は20代半ばで、その会社でも一番の若手でした。一方、クライアント企業でやり取りさせていただくのは、40〜50代の方が多くて、仕事は年齢ではないと思いつつも、やはり年齢やそれに伴う経験を見られているなと感じていたんです。
それならば、一度このタイミングで事業会社を経験して、そこからまたコンサルに戻るなり、ファンドなどにキャリアチェンジするなり、という選択もいいんじゃないかなと思って、転職を決めました。

ー そこから、マネーフォワードに入社されたんですね。冨山さんが入社された2014年当時は、メンバー数は30名足らず、『マネーフォワード クラウド会計』も前年にベータ版が出たばかりというタイミングでしたが、何が入社の決め手になったんでしょうか?
コンサルから事業会社への転職となると、王道のキャリアとして「コンサル出身者が行くならここ」みたいな企業がいくつかあったんです。最初は、そういう企業にも応募していたんですが、同じ属性の人が多いところだと、これから経験することやキャリアがなんとなく想像できてしまって。それならば全く予想のつかないベンチャー企業の方がいいと思って、何社かに応募したんです。
その中でマネーフォワードを選んだ理由は、事業フェーズと経営陣との相性ですね。
それまで、コンサルとして事業アドバイスや実行支援をしてきたものの、いざ自分が事業会社の中に入った時に、何ができるのか知りたかったんです。そのためには、ゼロイチに近いフェーズで、自分がこれまで培ってきた能力や経験を少しでも活かせるところがいいと考えていました。マネーフォワードは、ちょうど『マネーフォワード クラウド会計』が立ち上がったばかりで、公認会計士やコンサルの経験を活かしてゼロイチに挑戦できるぴったりのタイミングでした。
あとは、CEOの辻さんや当時COOだった瀧さんと面接する中で、事業への想いにも共感できたし、比較的自由にやらせてもらえそうな雰囲気も感じました。小さな組織では、経営メンバーとの相性もすごく大事だと思っていたので、マネーフォワードを選んだのはこのポイントも大きかったです。
よく言われる、ベンチャーに入社する漠然とした不安みたいなのはありませんでした。僕は「日本の大企業で長年ずっと勤める」みたいなことは全然考えていなくて、コンサルの厳しい環境でやってきた自負もあったし、当時は若くてまだ独身だったので、何かあればまた他の場所でもやっていけるだろうと思っていました。

ー 当時は『マネーフォワード クラウド会計』の事業推進担当として入社し、どんな仕事をされていたんですか?
何でもやっていました。本当にゼロというか、そもそもどうやって営業をするのかから考えないといけない状況だったので、面白かったですね。
事業推進担当とは言いつつも、具体的なことは決まっていないですし、開発以外のビジネスメンバーが僕を含めて5人くらいだったので、その時その時の足りないところをやっていく感じでした。
メインのミッションは、いち早く『マネーフォワード クラウド会計』のプロダクトマーケットフィットを達成すること。当時は、SaaS営業のセオリーや型のようなものはまだなく、お客様がどんなペインやニーズを持っていて、そこにどう応えればサービスを導入していただけるのかをずっと考えて、手当たり次第に仮説を出し、実行検証していました。例えば、今のような、会計事務所様と関係性を築いてプロダクトを提案するということも、当時は仮説のひとつだったんです。
とにかくずっと出ずっぱりで、日本中に出張に行ってました。1週間のうち、定例会議のある日の半日しかオフィスにいなかったんです。自分でテレアポやファックスDMをし、セミナーからリードを獲得して、全国のリード先に個別訪問しつつ、会計事務所様にもヒアリングに通って、仮説を立てながら営業戦略を見直して、ということを全部やっていました。
そこから、組織が大きくなるにつれて、規模や地域でチームを分担しようという話になり、僕は主に大規模事務所と九州のお客様を担当するようになりました。セールスのメンバーが増えてからは、僕は事業戦略の部分に軸足を移して、お客様のニーズをもとに、機能開発の方向性を提案したり、競合分析などからプロダクトのビジョンや料金体系を考えたりなどがメインになりました。
実は入社した頃は、3年くらい働いて色々経験できたら辞めよう、と思っていたんですが、あまりにも忙しくて気づいたらとっくに3年は過ぎていました(笑)

ー その後、冨山さんはマネーフォワードの初めてのグループ会社「マネーフォワードケッサイ株式会社」を立ち上げて、その代表取締役になるわけですが、これはどういった経緯で決まったんですか?
もともとは、『マネーフォワード クラウド』の事業戦略を立てる中で、バックオフィス業務だけではなく財務・資金繰りにもユーザーの大きなペインがあると気づいたのが始まりでした。そして、それを解決するためには、ファクタリングサービスがベストなのではと考えたんです。
最初は、マネーフォワード内の新規事業のつもりで辻さんに提案しました。そこから、話が具体化していくうちに、従来のマネーフォワードの事業とは異なる金融サービスであることや、僕の新しい成長機会を作る意味でも、グループ会社として切り出す方がいいんじゃないかという話になり、マネーフォワードケッサイを立ち上げることになったんです。
ー グループ会社を立ち上げるとなると責任も相当だと思いますが、事業として成功できる確信のようなものはあったんでしょうか?
確信はなかったです。でも、それでいいというか、『マネーフォワード クラウド』での経験を通じて、最初から正しい道を見つけられなくても、とにかく仮説を立ててしっかり検証して次の仮説を立てるということを愚直に繰り返せば、事業は成長できるとは信じていたんです。
マネーフォワードケッサイ立ち上げの段階で、初期の戦略や仮説はもちろんありましたが、それを絶対に成功させるというよりは、ユーザーのペインを明確にして、そこにうまくフィットするように仮説を更新していけば、プロダクトマーケットフィットはするだろうと思っていました。
世界的な潮流や、グローバルでマネーフォワードに先行するIntuit※の状況などを見ていても、いずれ会計と金融は密接に結びついて、企業の会計データからその企業の財務上の型を類推し、与信付けすることが求められるとも考えていました。飛び地のようでいて、将来的にはマネーフォワード全体に貢献できるんだろう、という思いもあり、挑戦してみることにしたんです。
※金融ソフトウェアを専門とするアメリカのビジネスソフトウェア会社

ー はじめての経営と事業の立ち上げで苦労したことや、想定外だったことはありましたか?
最初はしっちゃかめっちゃかになるだろう、っていうのは覚悟していたんですが、『マネーフォワード クラウド』のようなSaaSと違って、努力したからといって売上が確定するわけでは無いところが、精神的にきつかったですね。
SaaSの場合、お客様が導入をしてくださったら売上は絶対にプラスになって、基本は利益もプラスになるはずです。でも、マネーフォワードケッサイの企業間請求代行のようなサービスは、お客様に導入いただいても貸し倒れるリスクがあり、売上がマイナスになる可能性があるんです。どれだけ努力しても気が抜けないというか、努力してもゼロ以上にはなるという保障がないということを、理屈として理解していても、実際に経験してみるまでその怖さがわかっていなかったんだと思います。マネーフォワードとしても本格的な金融サービスは初めてだったので、そのつらさや独特性の部分を、社内外に理解してもらうことにも、時間がかかりました。
与信判断の精度も含めて、マネーフォワードケッサイのモデルが出来上がってきて、リスク予想ができるようになったタイミングで、気持ち的には少し落ち着きましたが、そうなるまで2年くらいかかりました。
社長という役割については、最初から「社長としてこうあるべき」というものが自分の中にあまりなくて、だからこそギャップもなかったので一喜一憂することはありませんでした。本当に、事業をどう成功させるのかだけ見ていた感じですね。
ー そういった創業当初の混沌を乗り越え、事業が信頼を得て、2021年の三菱UFJ銀行様との新合弁会社「株式会社Biz Forward」設立が叶ったんですね。
そうですね。株式会社Biz Forwardは、マネーフォワードにとって初の合弁会社ですし、設立に向けてマネーフォワードケッサイの時とはまた全く違った大変さがありましたが、マネーフォワードグループとしてメガバンクとともにビジネスができるというのは、とても良い話だったと思います。
この1年で、中小企業のお客様に向けたオンラインファクタリングサービスを提供できる体制が整ってきているので、ここからさらにお客様のニーズに応えていければと思います。
株式会社Biz Forwardの設立以降、『マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups』『マネーフォワード 請求書カード払い for Startups』などの新しいサービスを提供できていることも、大きな成長だと思います。先ほどお話したように、もともとが『マネーフォワード クラウド』のユーザーの皆さんの金融周りのペインを解消したいと思って始めた会社なので、今後もそういった課題解決に必要な新しいサービスをしっかり提供していければと思います。

ー 今後の目標について聞かせてください。
事業に関しては、マネーフォードグループ全体のSaaS×Fintechという強みを活かし、エンベデッド・ファイナンスによって手間なく金融サービスが享受できる世界観を築きたいです。『マネーフォワード クラウド』ユーザーの皆さんが、会計や請求書などの機能を使うだけで、シームレスにマネーフォワードケッサイの金融サービスも受けられるようなイメージですね。
僕自身については……実は、この「今後の目標」という質問は苦手なんです(笑)
僕は、高いモチベーションや熱量を持ってガンガン前に進むというよりは、世の中に求められていることを捉えて粛々と進めるタイプです。経営ってすごくプラスマイナスの振り幅が大きいので、どこか冷静でいないと、耐えられなさそうだなと思って。この発想は、あまりベンチャー企業の経営者っぽくないですよね。
周りの色々な人の話を聞くと、マネーフォワードグループ以外にも世の中には面白そうな仕事は沢山あるし、ここが唯一絶対の正解ではないと思ったりもします。でも、今の僕には、ここ以上に強い想いを持って向き合える場所は、まだ見つかってないですね。
今は、マネーフォワードケッサイにとても優秀なメンバーがたくさん集まっていて、そういう人たちと一緒に、まだ世の中にない価値を提供できている感覚を得られることがやりがいになっています。手放しに「楽しい!」と言える余裕は持てていないんですが、10年後くらいに振り返ったら、すごく楽しくて充実した日々だったって思えるのかな、と思います。
だから、この場所でこれからも、自分ができることと世の中に求められてることを考えながら、サービスという形で答えを出していく、そのために自分の役割も変えていく。それが僕自身の目標というか、道筋かなと思っています。

今、マネーフォワードへの応募や入社を検討されている方へのメッセージとしては、僕が入社した時と、かなり会社のフェーズも変わっていいますが、中長期的にしっかり地力をつけて成長したい人には、マネーフォワードはおすすめですね。
間違いなく現時点で日本のSaaSのトッププレイヤーの1社であり、今も急成長を続けている会社なので、そういう会社が、どんな考えと行動によって既存事業を伸ばして、新サービスを生み出し続けているのか、体験できる貴重なタイミングだと思います。
僕がこれまで採用して一緒に働いた若手のメンバーでは、思考耐性のある人が活躍していますね。組織が大きくなっても、常にあらゆることが変わり続けているので、答えの無い状況に対して、粘り強く考え抜く体力がある人は、今もこれからもきっと活躍して成長できると思います。
取材・文/苞山美香(マネーフォワード採用広報)
写真/新田大航(マネーフォワード採用広報)