
マネーフォワードでは、2022年から「無意識バイアスワークショップ」を実施しています。
「無意識バイアス」とは、人が誰でももっている、無意識下の思い込みや偏った考えを指します。
私たちは皆、身の回りで起こるさまざまな物事を、知識や経験・価値観に基づいて、頭の中で瞬時に考え、判断しています。これは、素早く状況を把握するための脳の機能です。
ただ、その考えや判断の中に、自分でも気がついていない、偏った思い込みが存在します。特に、無意識のうちに判断していることがらは、日々の言動に現れてくるものなので、自分ではそんなつもりはなくとも、無意識のうちに相手を差別していたり、言動によって傷つけてしまう、ということが起こりえます。
組織をつくる上で、メンバーひとりひとりが、自分も気がついていない思い込みに気づき、言動に気を配ることはとても大切なアクションです。
まず「無意識バイアス」がどういったものなのか、そしてそれは誰にも存在しているということを知ることを目的として開催しているのが、マネーフォワードの「無意識バイアスワークショップ」です。
今回は、そんな「無意識バイアスワークショップ」を運営する二人にお話しを聞きました。
忍岡真理恵 / Marie Oshioka
2018年マネーフォワードに入社、「マネーフォワード おかねせんせい」(ユーザーに最適なお金の行動をアドバイスするサービス)の立ち上げや事業開発、社長室長を経て現在は経営企画部にて国内外のIRなどを担当。
私生活では8歳男子の母。
白倉侑奈 / Yuna Shirakura
2021年マネーフォワードに入社。2年間イギリスにて社会人留学をし、人的資源管理の修士号を取得。People Forward本部内で組織開発を担うTalent Growth部に所属。エンゲージメントサーベイ、社内研修などを担当。
私生活では2歳男子の母。
ー 無意識バイアス研修を始めた経緯を聞かせてください。
忍岡:多様なメンバーたちが働く上で、お互いの個別の事情を考慮せず、バイアスを持って接することで、相手のチャンスを奪ってしまったり、嫌な思いをさせるかもしれない。これは、誰にでも起こり得ることなので、まずは「無意識バイアス」が存在していることを認識することが必要なのかもしれない、というのがこの研修実施のスタートでした。
これを考え始めた当初は、男女の差について問題意識があったんです。
女性だから、という理由で言いづらいことがあったり、日本人の男性が普通だと思うことと、女性が思う常識が微妙に異なっていると感じたりしていました。
社内からも、
女性だからという配慮から、出張にアサインされにくい
お客様から「女性ではなく、男性の担当者と話がしたい」と言われた
女性であることでマネージメント職であると思ってもらえない
といった声が上がってくることがあり、女性管理職メンバーから、女性が本当に働きやすい環境なんだろうか、という課題が提起されていました。
明確な差別があるわけではないけれど、一般論としてよく言われるのが、キャリアを追求している女性は傲慢な性格だと思われやすい、といった、差別をするしない以前の、もっと根源的な問題があります。
だから、「無意識バイアス」について、ちゃんと考えた方がいい、というモチベーションが強かったんです。
ただ、昨年の象徴的なできごととして、コロナが一旦収束し、海外メンバーが増えたことで、この問題は男女間にだけ存在するわけではない、という話になりました。
今は、男女の賃金格差をはじめとした、さまざまな話題が出るようになって、少しずつ変わってきているように感じています。
白倉:こういったワークショップは、最初のハードルが低くないと難しい面があります。
そして、例えば男対女、といった対立構造を生むことは本意ではないので、まず、無意識バイアスというものの存在について知り、ディスカッションができることをゴールとして、継続的に実施し、社内のメンバー全員が、その概念を知っている状態をつくることを目指しました。
はじめは、エンジニアの女性の数が少ないことや、男女間の賃金格差が主だった課題だと思っていましたが、ワークショップに参加してくれた人たちの話や感想を聞いて、今組織の中で、どこでどんなことが起こっているのか、少しずつ見えてきました。
また、参加メンバーから「これは自分の上司が参加してくれないと何も変わらない」といった声があったり、評価の観点でも無意識バイアスが存在していないか、考えないといけない。私が担当している「1on1研修」にも無意識バイアスに関する視点が必要です。
まず、社内に無意識バイアスの存在が浸透したら、次のステップとして、それをもっと深くて広い議論にしていかないと、と思っています。
ー 具体的に「無意識バイアスワークショップ」はどのように実施しているんでしょうか。
白倉:これまで開催した回では、任意参加で希望者を集め、昼休みの時間に実施しています。これまで4回開催し、100名近くが参加してくれました。
日本語での開催はもちろん、英語話者のメンバーが多いときは、英語でも開催しています。
知識として知ってもらうだけでなく、自分で考えて喋ってもらうことが大事なので、グループセッションを通して、無意識バイアスを知った上で何ができるのかについて話していただく時間を設けています。
忍岡:開催にあたって、メルカリさんの資料を拝見しました。とてもわかりやすく、素晴らしい資料で非常に参考になりました。さらに、実際にメルカリで無意識バイアスについて取り組んでおられる方に、実際にどういったことをしているか聞きに行ったんです。
先ほどもお話しした通り、まずは、無意識バイアスの概念を知ることが大切です。
概念を知っておくことで、例えばなにか嫌だなと思うことがあったときに、話が始められるんです。なのでまず、「無意識バイアス」とういう共通言語の浸透が必要です。
無意識バイアスを無くすことは難しいけれど、まず認識しよう、ということを話しています。
参加メンバーからは「無意識バイアスなのか、ただ気を遣っているだけなのか、の違いがわかりにくい」という声がありました。
例えば、特定の宗教を信仰している国から来たメンバーに「これは食べられますか?」と尋ねたり「ベジタリアンの店がいいですか?」と聞いたりするのも、無意識バイアスかもしれない。自分としては、良かれと思って気を遣ったことが、相手にとっては不快なことかも知れない、と考えると、どうすればいいのか分からなくなってしまう、と。
なので、一番最初の回では「どういう無意識バイアスがあるか考えよう」という投げかけをしたんですが、2回目からは「無意識バイアスが良くない場合と、良い場合の違い」を考えることにしました。
相手が不快に感じたら良くないし、こうだろうと決めつけてしまうのは良くない、でも、話をする中で気が付くのは、これは良くてあれはダメ、という白黒がはっきりしないことの方が多い、ということなんです。
白倉:どこのグループでも、ディスカッションの中で自然に、いろいろな話が出てきましたね。
ワークショップの形式にしているのは、座学のような会にするのではなく、あくまでも参加メンバーがそれぞれに考えを話して、皆で考えることが大切だからなんです。
また、仕事の中で感じたことだけでなく、プライベートでの話でもOK、ということにしたことで、より自分の経験を幅広く思い出しながら「これも該当するかな?」「あれはどうだろう?」と話が広がっていく印象です。
グループワーク中のワークシートを他のグループからも見られるようにしたことで、他のグループで話している内容も見ることができ、そこからさらに話が広がっていきました。オープンに議論したり、誰かに共感したりされたりするという経験が大事だと、改めて感じた瞬間です。
ー これまで4回開催してみて、手応えはどうですか?
白倉:参加したメンバーの反応はよく、実際終了後のアンケートでも満足度は約96%と非常に高いです。当日は皆和気藹々とディスカッションができているし、リアクションもとてもいいと思います。
ただ今はまだ、マネーフォワード全体の人数を考えると、10%に満たない意識の高い人が参加している段階です。会社全体にむけてどうアプローチしていくかは、もう少し考えてみる必要があると感じています。
忍岡:無意識バイアスに関して、誰かと話しをすることに価値を感じてくれている人が多いですね。
知識をインプットすることはもちろん、普段接点のない人と、このトピックについて話すことが、気づきに繋がっているんです。
自分が無意識バイアスのことを、全く知らなかったことにきがついた。いろんな視点を知ることの面白さがある。といった声をいただいています。
バイアスをなくすことは難しいけど、無意識バイアスというものがある、と自覚できるだけでも振る舞いは変わりそうだし、逆に自分がそういった発言を受けても冷静に対処できそうだなと思った。
バイアスの存在に気づけたとしても、全く傷つけないことは難しいのかも、と思いました(気をつかって発言したとしても、相手を不快にさせてしまうことはありそう)。結局、その都度コミュニケーションを相手と取ってアップデートしていくぞという気持ちが重要なのではないかなと思います。
ワークショップ中に、他のチームの見解がシートで見れるのがすごく良かったです。それを見て、自チームでの議論が深まりました。また、最後のグループ発表でも、「相手から無意識バイアスを感じ取ると自分もその人にバイアスをかけてしまう」「良かれと思った発言も無意識バイアスに影響を受けているケースがある」「自分へのバイアスもある」などが、自分になかった視点が知れて、とても気づきが多かったです。
全員が考えたほうがいいテーマだと思うので、普段一緒に仕事をしているメンバーでも議論できると、より良いと思いました。
白倉:ただ一方で、知らなかったことを知る楽しさはあるけれど、それを自分の日常に落とし込むとなると、また違ったストレスが発生することもあります。
それに、希望者に向けてある程度突っ込んだ内容の話を伝えていくことと、まだ何も知らないメンバーに向けてに伝えていくことは別のアクションが必要なので、そのあたりも、今後に向けて検討したいですね。
ー 今後、この「無意識バイアスワークショップ」はどんなふうに広がっていくでしょうか。
白倉:4月14日にDEIステートメントが公開されたこともあり、無意識バイアス研修も改めてどうしていくか考えていきたいですね。
無意識バイアスワークショップとは別で行っている、多様な国や地域出身のメンバーとのコミュニケーションの際にどんなことに気を付ければいいかを学ぶ「異文化コミュニケーション研修」という研修は、すでに社内の90%以上のメンバーが社内の学習システムを使って学ぶことができているんです。
これまで「無意識バイアスワークショップ」は、希望者のみへの実施に留めていましたが、上のアンケートにもあるようにもっとメンバーに影響力のある人にも参加して欲しいと思っています。無意識バイアスについて、もっと喋れる人を増やしていきたいし、他の研修とも連携する流れを作りたい。
それぞれ違った価値観を持ったメンバーが対立するかも知れない可能性を意識して行動できれば、もっとリスペクトが高まるだろうし、そうなった先の世界が見てみたいと思っています。
忍岡:まずはメンバー全員が、無意識バイアスについて知って欲しいですね。その上で必要だと考えているのは、対話をする技術だと思います。
例えば、相手が自分に対して何かバイアスを持っていたり、逆に自分がそれを指摘されたときにどうやってコミュニケーションをするか、という点です。今はそれに関して、個人のコミュニケーション能力に頼ってしまっています。
でも、そういうトピックをどういうふうに対話するか、というコツをみんなが持てれば、それぞれにとって組織がもっといい環境になっていくと思うんです。
無意識バイアスに気がついたときに、何もせずになんとなくお互いに流してしまうのではなく、嫌な気持ちになったり、相手をそうさせたりしてしまったりしたときは、気持ちよく解決できるのが理想ですよね。
白倉:今までは、共通言語がなかったから、どう進めていくか軸が定まり切っていない部分がありましたが、DEIステートメントを作ったことで、一つの道すじが見えた気がします。
これから、社内のリアルな声をもっと反映させていきたいと思います。そのためにも、サーベイの結果やDEIに関する他の施策も、同時に考える必要があると思います。
できることもやれることも、まだまだたくさんあります。ここからまた出発していきたいですね。
【マネーフォワードのDEIサイトは以下の画像をクリックしてください】

取材・文/新田大航(マネーフォワード採用広報)