
マネーフォワードは、2024年のエンジニア組織英語化をはじめ、組織全体のグローバル化を進めています。
今回は、すでにグローバルメンバーで構成されている開発チームの、エンジニアリングマネージャーの2人にお話をお聞きしました。インタビューを通じて、現在の進捗や将来の展望についてお届けします。
松原 哲範(マツバラ テツノリ/Teppan)
Sun Microsystems、Microsoft、Amazonにて、日本とアメリカで約30年間ソフトウェア開発と開発チームのマネジメントを経験。Amazon Japanでは、マーケットプレイス事業の初期立ち上げメンバーとしてサービスの急拡大に貢献。シニアマネージャーとしてチームマネジメントやプロジェクト統括を担当。AWSでは、シアトルにて、AWS Support 部門のPrincipal TPMとして活躍。2022年、マネーフォワード入社。CTO室 グローバル部 部長。
Trivedi Vishwas(トリべディ ビシュワス)
大学卒業後に、Acty System Indiaにエンジニアとして入社。2016年に、インドから日本本社に異動して以降は、日本でインドと日本の混合チームで開発とマネジメントを担当。VeBuIn Pvtで、開発プロジェクトマネージャーを経験後、2022年、テクニカルプロダクトマネージャーとしてマネーフォワード入社。マネーフォワードエックスカンパニー ソリューションデザイン本部 法人サービス開発部 部長。
ー Teppanさんは、15年間いらっしゃったAmazonから、なぜマネーフォワードに転職されたんですか?
Teppan:Amazonから出ようと思ったのは、単純に、15年でやるべきことをやり切った感があったからです。
最初は、Amazon Japanに、マーケットプレイスの立ち上げメンバーとして入社しました。当時は、楽天やYahoo!に追いつけ追い越せという、すごくスタートアップっぽい活気のある時期でしたね。周りの開発メンバーも、日本人中心だったところから日本語不問のグローバル採用になるまで、変化を体感しました。主にプロダクトマネジメントと開発マネジメントを兼務して、最終的には、複数チームの50〜60名のメンバーを見ていました。その後、シアトルのAWSに移籍し、TPMを2年間務めました。
転職先は、「技術にコミットしている」「自社サービスを持っている」「Headquartersである」などの軸で探していました。その中で、マネーフォワードの決め手になったのは、会社の将来性とメンバーとの相性です。しっくりきたというか、気持ちの良い人が多いなと思って。
実は、私はこれまで外資系でしか働いたことがなく、日本の会社で働くのはマネーフォワードが初めてなんです。入社前は、そこに不安もあったんですが、入ってみたら意外と違和感なく馴染めました。

ーVishwasさんは、インドにいらっしゃった時からこれまでも、ずっと日本企業に勤められていたんですね。
Vishwas:はい。日本企業のインド支社に入社して、そこから本社に異動になって以来、日本で暮らしています。2社目(前職)も日本企業だったんですが、開発以外にもマネジメントやお客様とのやり取りなど、業務がかなり幅広かったので、もう少し自分のコアである技術に集中したいと思って、転職を決めました。
マネーフォワードは、プロダクトはもちろん、マイクロサービスの開発や、フラットなチーム体制などに魅力を感じました。そういった環境であれば、他の人からの学びも多そうだし、色々挑戦しながら自分のスキルをさらに高めることができると思ったんです。
実際に入社してみて、その点は期待通りでした。例えば、開発計画を立てる時も、トップダウンではなく、課題をもとにチームでブレストしながら解決方法を決めるので、大きなアーキテクチャ変更も、メンバーの意見を踏まえて着手できるところが良いですね。私のチームは、メキシコ、ブラジル、インド、ベトナム、インドネシアなど、多様な国の出身メンバーで構成されているので、お互いの考えやカルチャーを学べるのも良いところです。

ー お2人は、社内でもグローバル化の進んでいる開発チームをマネジメントされていますが、具体的にどんなお仕事をされていますか?
Teppan:私は、CTO室に所属しながら、先日までは、社内出向のような形で、HRソリューション本部でチームのグローバル化推進を任されていました。
複数のNon-JapaneseメンバーがHRソリューションズ本部に異動したのをきっかけに、そのメンバー達が新しいチームで上手く立ち上がれるように、また海外拠点とのやり取りをよりスムーズにするために、私も異動したんです。全社に先駆けた英語化は、メンバーが前向きに取り組んでくれたこともあり、おおむね順調です。
ここからは、CTO室 VPoEと一緒に、本部を越えた全体の戦略に本格的に取り組む段階です。まずやるべきだと考えているのが、チーム間コミュニケーションのノウハウ共有。Japaneseメインのチーム・Non-Japaneseメインのチーム・混成チームがある中で、そういったチーム同士がどのようにコミュニケーションを取っているのか、これまでどんな課題が発生してどう解決したか事例をまとめたいと考えています。それによって、今後新しくグローバル化するチームも、スムーズに移行できるはずです。
ー チーム間コミュニケーションという点では、Non-JapaneseメインのVishwasさんのチームでは、どのように他チームとコミュニケーションを取っていますか?
Vishwas:前提として、マネーフォワードエックスの開発チームは、法人向けサービスと、個人向けサービスに分かれています。私がいる法人向けサービスの方は、Non-Japaneseメンバーの方が多いです。一方で、個人向けサービスの方は、Non-Japaneseメンバーの採用を始めたばかりで、これから増えていく予定です。ただ、すでに英語でのチャットコミュニケーションは問題なくできていて、会話もスムーズに移行できる気がしています。
これは、PdMやビジネスのメンバーの協力が大きいですね。みんな自主的に「英語を学びたい」「Non-Japaneseメンバーと対話したい」と、言い始めてくれたおかげです。最初の頃は、私が間に入って、日本語と英語の橋渡しをすることも多かったんですけど、気づいたらみんな自分たちで会話をするようになっていました。

ーコミュニケーションに関連して、英語化を進めると一時的にチームの生産性は下がると言われていますが、実際はいかがしたか?
Teppan:エンジニアが英語化すれば、 PdMやデザイナーの皆さんとのやり取りも、今までのようにはいかない。それで約束したロードマップを果たせるのか、という懸念は以前からありました。
結果、HRソリューション本部では、一時的な落ち込みはあったけれど、早期に挽回できたことで大きな問題にはなりませんでした。その落ち込みに関しても、それが本当に英語化のせいだったのか、別の要因だったのかは判断が難しいところなんです。開発体制を大きく変えたタイミングでもあったので、英語化だけではなく複合的な要因があったんだろうと思っています。
どちらにしろ、採用のしやすさや、多様なメンバーが持ち込んでくれる技術の価値を考えると、一時的な生産性の低下があっても、グローバルな採用は全社にとってプラスだと実感しています。
ー Vishwasさんのチームではいかがでしたか?
Vishwas:実は、開発のスピード感という点では、あまり問題は発生しませんでした
工夫したことを1点挙げると、最初の3ヶ月で、JapaneseメンバーとNon-Japaneseメンバーが、お互いに慣れるための時間を取ったんです。その間は、開発チームと、PdMチーム・デザインチームとのやり取りを、全て私が担当しました。そして、相手チームにどんなやり取りでどんな内容を伝えたのかを、両チームにオープンに共有することで、最初に「コミュニケーションの型」を知ってもらったんです。ミーティングでも私が通訳をして、やりとりに少しでも疑問がなかったか常に確認しました。
あとは、スクラム開発を導入したのも有効でした。スクラムはチーム内のコミュニケーションがコアになるので、逆に言うと、コミュニケーションしないと開発が上手くいかない。なかば強引にコミュニケーションが必要な状況を作ったのも良かったと思います。
ただ、このやり方に再現性があるかどうかは、まだ検証が必要ですね。メンバー構成や組織の大きさ、開発体制によっても変わってくると思います。

ー社内には、Non-Japaneseメンバーのマネジメントは初めて、というマネージャーもいると思います。おふたりの経験から、マネジメントする上でのJapaneseとNon-Japaneseの違いや、意識していることはありますか?
Teppan:私の場合は、メンバーというよりも、外資系企業とマネーフォワードの間で、組織や仕事のやり方に違いを感じますね。これによって、外資系企業出身のメンバーは、戸惑いを感じる人もいると思います。
いくつか例を挙げると、ゴール設定、レポートライン、ミーティングの形式などでしょうか。ゴール設定については、ゴールトラッキングも含め、少し曖昧に設定されているなと感じます。メンバーの兼務が多いので、自分のマネージャーが複数いるような場合は、レポートラインが複雑になり、シンプルな組織に慣れた人は混乱するかもしれません。ミーティングは、全社規模からチーム単位まで、全員参加型で共有形式のものが多い印象なので、これも一部目的の明確化や見直しが必要かなと思っています。
これは、どっちが良い悪いじゃなくて、ひとつのやり方だと思うんです。外資系企業はジョブ型を基本にしてるので、その違いが大きいかもしれないですね。ただ、外資系企業出身のメンバーが増えてきた時に、この違いがやり難さに繋がらないかどうかは心配なところで、アップデートも必要だと考えています。
ー 確かに、「同じ釜の飯を食う」ではないですが、同じ時間を共有することで、結束を強めたり考えを浸透させていくことや、マネジメントの所在がが少し曖昧でも仕事を進められるというのは、日本企業もしくはメンバーシップ型の特徴かもしれませんね。
Vishwas:私は、これまでずっと日本企業で働いてきたので、時間の共有を大事にしている感じは、その通りだなと思いますね。ただ、ミーティングの目的や頻度は、私も都度見直しが大事だと思います。
Teppan:レポートラインについては、実際にメンバーから「私のマネージャーは誰なの?」という声も聞きますね。私も過去の会社では、自分のマネージャーは1人でした。指示も評価もそこから来るのでシンプルなんです。目標設定や評価という場面では特に、ゴール設定や、誰がどのゴールにオーナーシップを持っているのかをより明確に、また評価フロー自体を仕組み化する必要を感じています。
評価基準やフローに曖昧さがあると、普段のコミュニケーション密度や、それによって醸成された認識が、意図せず評価に影響してしまいます。つまり、声の大きい人が有利になってしまうんです。
例えば、「〇〇さんは最近すごく頑張ってるよね」みたいな認識って、日々の何気ないコミュニケーションの中で醸成されてくると思うんです。評価に関わるシニアメンバーが、Japanese・Non-Japaneseに関わらず、交流できていれば良いですが、どうしても偏りは出てくる。そうすると、認識醸成の段階で、片方が不利になってしまいフェアではありません。仕組み化の一歩としては、まずは振り返りやフィードバックのドキュメント化を徹底するなど、やり方を検討しているところです。

Vishwas:マネーフォワードエックスでは、PR(Pull Request)数や、スプリントやキャパシティに対してタスクを完了した数なども、計測し始めています。
Teppan:いいですね。そういった客観的な指標をもっと増やしていきたい。
別の視点ですが、Japaneseメンバーは、相対的に控えめに自己評価を出す人が多い傾向があります。一方で、グローバルで活躍しようという人は、主張するべきことは主張するという感覚があるので、むしろ、強めに成果をアピールしてくる人もいる。これも、どちらが良い悪いではなく、メンバーのスタンスや声の大きさが多様化してくると、より、ゴールやそこに向けた自身の期待値がクリアである必要があるんです。それが不明確だと、先ほど話したような色んな要素に影響されて、判断軸がブレてしまうので。
Vishwas:確かに、毎月の振り返りでも、Japaneseメンバーの方が、成果をテキストでレポートしてくれる量が少ないと感じますね。私も書いてもらうよう促してはいるんですが、例えば、3つの成果トピックがあっても、そのうちの1〜2個しか書いていないイメージです。対して、Non-Japaneseメンバーは、その3つのトピックを、さらにそれぞれタスクを分解して書いてくれたりします。
Teppan:日本人は恥ずかしがりやですよね。でも、自分の成果を明文化してレポートするってことができないと、グローバルな土俵に立った時に、実力はあっても負けてしまうかもしれない。ここは、メンバーの皆さんにも、啓蒙していきたいです。

ー これからどんな人にマネーフォワードに来ていただきたいですか?
Vishwas:ジュニアメンバーが憧れる、ロールモデルになれる人が、もっと増えて欲しいですね。
エンジニアリングマネージャーを例に挙げると、技術力・プロダクトへの理解・マネジメント力の3つが揃っていて、ジュニアメンバーに知識を共有して、困りごとにも素直に答えることができるような人。今は、この3つが揃っている人が、部長や本部長に集中しているので、もう少し距離の近い場所に、そういった人がいる状況を作りたいですね。
Teppan:それこそVishwasさんみたいな人が、まだ少ないですよね。会社自体がまだ若いので、組織の成熟はまだまだこれから。急拡大した組織のあるあるというか、事業が伸びている時は、採用も育成も追いつかないので、これから、そういった人たちにどんどん入って来て欲しいし、社内でも育てていきたいです。
あとは、現状をどんどん変えていける人でしょうか。
私は、面接でCEOの辻さんにお会いした時に、「私はAmazonのやり方しか知らない。だから、マネーフォワードに入ったら、今までのルールや周りと色々ぶつかるかもしれません。でも、飲み込まれるのはつまらないので、異分子的な存在として動いて変化を起こしていきます」とお話したんです。それに対して辻さんは、「マネーフォワードはこれからも変わり続けないといけない。だから、むしろそういう人に来て欲しいんです」と、おっしゃられました。
CTOの中出さんもそうですが、経営陣の方が現状に甘んじることなく、変わっていきたいと思っているのは、ヒシヒシと伝わっています。先日の、Cultureのアップデートで「Evolution」が入ったのも、そういった意思が込められていると思います。
Vishwas:マネーフォワードは、これからも大きく変化すると思います。
グローバル化のフェーズを、まずは英語化、次に海外拠点の拡大、最後がプロダクトのグローバル化と考えると、今は最初のフェーズにすぎないので。
Teppan:「Globalization」は言い換えれば「Borderless」を目指すこと。そして、Borderlessであるには、「Frictionless」じゃなきゃいけない。マネーフォワードの開発組織を例に挙げれば、エンジニアが世界中どの国の拠点に行っても、 スムーズに仕事ができる状態ですね。言語が統一されていて、開発プロセスが似通っていて、ツールが同じで、KPIや評価方法も同じ。そういう組織を作りたいと思っているんです。
そういったBorderlessな環境を作ることに賛同できて、世界の中で自由に活躍したいという人に、これからのマネーフォワードを一緒に変えていって欲しいですね。
Vishwas:本当に、まずはBorderlessが目標ですね。
Teppan:これはエンジニアに限らないですが、今後は、自分のホームカントリーでしか働いたことのないというのは、キャリア上すごくリスクがあると考えています。日本人であれば、日本でしか働いたことがないという状況です。日本の中のグローバルな組織で働くのと、そもそも違う国で働くっていうのは、一見職場環境は同じに見えても全く空気が違うんです。個人的には、特に若い人に、他の国で働く経験をもっとして欲しいと思っています。マネーフォワードでそれができる環境を作っていきたいですね。
